6日目
歴史や政治、経済が専門ではない私は、自分勝手にそう考えてしまいました。考えたというより、そう願っているのかもしれません。交差点の赤信号で車が止まるたび、乞食やホームレスの人が多数寄ってきます。ドンドン!と窓をたたく者。頼んでもいないのに窓ガラスを拭き、チップをねだる者。大雨の降る中、車の前でバック転を何度も繰り返し、泥だらけになりながら恵みを乞っていた5,6歳の女の子。雨が降り始めると同時に、雨宿りをするではなく、雨の中に飛び出し全身を洗うホームレスの人たち・・・そんな彼らを見て、幾度となく財布に手をかけました。だけど、きりがありません。それはそれはたくさんの人が恵みを乞うっているんです。彼らに僅かな恵みを与えるのは日本人として簡単なことです。ですが、それでは事態の根本的な解決にはなりません。彼らの自立につながる援助の方法を考えないといけないのでしょうが、残念ながら、凡人の私には妙案はありません。ですが、世界中のみんなが知恵を出し合えば、きっと何かができると信じてやみません。Yes,
we can!!!!
その後の食事は、「何が食べたい?」というガイドに対し、「最後はやはりカレーが食べたい」とリクエストしました。行った先は、高級なレストランではなく、至って庶民的なフードコートのようなお店。ですが、混み合う店内からもわかるように、味もおいしいし、かつ、インド庶民の日常を垣間見ることができとってもいい経験となりました。
食事の後、デリーの官庁街やインド門などを簡単に観光し、その後、デリーでの、いや、インドでの最後の観光地なる、ガンジーが火葬されたラージ・ガートに向かいます。ですが、空模様が怪しくなってきました。雨季ですし、しかも南アジアです。いつ大量な雨が降ってもおかしくはない条件がそろっています。ですが、「大丈夫!」一点張りのガイドさん。インドにいるのでインド人を信じるしかありません・・・が、 到着し、写真を数枚撮ったと同時に降り始めました。それも激しい雨が。数百メートル先も見えないほど、一気に雨と雲であたりが包まれてしまいました。雨宿りをしている最中、幾度となく「もうすぐ止む」というガイドさん。だけど、一向に止みません(笑)。しかもガイドさん、「傘は持ってこなかったのか?」と言い出します。大丈夫といったのは誰でしたっけ!?・・・と思いながらさらに待つこと10数分。しまいには、「じゃあ、雨を突破して車まで戻ろう」ということになってしまいました。雨はまあ、平気なのですが、道路までの500メートルほどの道はすでに冠水しているんです。恐るべしインドのスコール!
その後、信号で止まるたびにホームレスや物乞いの人たちが車の窓をどんどんとたたきます。私の乗った車だけはなく、インド人が乗ったリキシャーなどにも。だけど、私が見た限り、誰一人振り向こうともしません。誰一人小銭すら渡そうとしません。きりがない。その一言に尽きるのかもしれません。カンボジアでもそうでした。フィリピンでもそうでした。ミャンマーもそう。多くの国でこのような光景を見てきましたが、インド、それもこのデリーの街が、私にとって一番辛い街でした。きりがないんですもの。本当に多くの人がたちが・・・彼らだって、好きでそうなったのではないですし、そもそも、私と同じ1人の人間なんです。私と同じ。ただ、生まれた国が違うだけ・・・。今、旅行記をまとめているだけで、胸がいっぱいになってしまいます。
その後30分くらいプレールームで一緒に遊んだでしょうか。言葉なんて通じません。ボランティアの女性が2人いたけど、彼女たちはヒンディー語で話しかけていました。だけど、英語と日本語という未知の言葉を話す私のところにも、子供たちがひっきりなしに寄ってきます。唯一、失明していた子だけはぽつんとうつむいたまま・・・だけど、その子も、最後に私が立ち去るときに手を振ると笑顔になったんです。嬉しかったなぁ。だけど、この後の彼らの生活を考えると、喜ぶことなんてできません。幾ばくかの寄付を残し、シスターにお礼を言ってこの場を去りました・・・後ろ髪を惹かれる思いで。
以上でインドでの観光がほぼ終了。強制的に連れて行かれたお茶屋さんで仕方なお土産を購入し、その後、どこにいるかよくわからない商店街での1時間の自由行動。行きたい場所はありました。デリー市内にある世界遺産で今回訪れなかったフマーユーン廟です。だけど、現在地とはかなり離れているようですし、雨もまた降ってきそうです。リキシャーに乗って1時間で帰ってくるのはどうにも難しい雰囲気です。仕方なく、市場のお店をくまなく見て、その後はそこを往来する人たちをウォッチング。市場の外れにあるごみの山に群がる野良牛が一番印象的でした。ごみの山の前は簡単な公園になっていて、ごみに面してベンチがあり、そこで若者やカップルが思い思いに話しをしているんです。ごみを見つつ、野良牛を見つつ・・・これもインドの現実の一つなんでしょうね。 既にすっかりと暗くなったデリーの街。しかも、相変わらず激しく雨が降っています。道路もいたるところで冠水しています。空港へ向かう車中、そんなデリーの光景をみながら色んなことを考えてしまいました。それはそれは多くのことを・・・だけど、私が考えたところで富と貧の差が縮まるわけでもありません。だからといって、何もしないでいては、一向に解決の糸口が見つかりません・・・。いったい、同じアジアに暮らす1人の大人として、私には何ができ、何をするべきなのでしょうか。
柄でもなく、そんな難しいことを考えていると、インドでの出発地だったデリーの空港に到着しました。移動距離は3日間で1000キロ以上にもなりました。こんな長距離を安全かつ無事に運転してくださったドライバーさん、そして私のわがままな願いをかなえてくれたガイドさんに幾ばくかのお礼渡し、空港へと入ります。まだ、定刻の3時間前。時間はたっぷりあります。 |