ワシントンDC旅行記 2009年
2009.9.192009.9.23


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3日目
 ようやく朝9:30。実質最終日です。カーテンを開けると雲ひとつない青空が広がっています。気持ちを新たに、まずむかったのが初日に訪問できなかったホロコースト記念博物館です。アメリカ合衆国が国費によって設立したものです。実は、私の訪問した3ヶ月前に白人至上主義の老人が銃を持って乗り込み警備員をライフル銃で射殺。自分も別の警備員に撃たれるという事件が起きた場所でもあります。

おしゃれな概観の博物館ですが・・・。

入り口横のこの言葉・・・。

ホテルから15分ほど歩いたでしょうか。ようやくたどり着いた入り口の前の「THINK ABOUT YOU SAW(自分が見たものについて考えてください)」という文字を見て、ただならぬ雰囲気を感じながら中に入りました。他の博物館同様、鞄の中までチェックされ、あとは無料なので展示室に進みます。まずはエレベーターで上階に上がるのですが、そのときに、係員の見取り図とIDカードを取りように言われました。IDカード?と思いながら、男性と書かれた方にあったのを一部をとると・・・なんと、ホロコーストで犠牲になった男性のIDなんです。写真つきで詳細な解説が載っています。まず、それに衝撃を受けた私。エレベーターに乗り込むと、年齢はゆうに80を超えると思われる男性係員が写真撮影は禁止です、などと説明をしてくれました。エレベーターが止まります。ドアが開くと、巨大な写真が待ち構えています。ナチスによる大量虐殺の全てを語るようなその写真。焼かれる死体の山・・・思わず手にしていたパンフレットで顔を覆ってしまった私です。私だけでなく、すべての来訪者が同じ行動をとっています。誰一人口を開こうとはしません。
 その後の展示物、そして資料映像。死体の写真も衝撃的ですが、ことさら
残酷な人体の解剖映像などは覆っているものを覗き込まないと目に入らないように配慮がなされています。とうぜん、辛いけど全てを見てきました。だけど、一番辛かったのが、彼らが連行された際に使用された貨物列車に足を踏み入れたとき。誰もいないはずの暗い車内から声が聞こえてくる錯覚に陥ります。列車の横には名前の書かれた鞄があります。「後で返すから名前を書いておくように」と伝えられ、それを信じて自分の名前を書いたユダヤ人たち・・・鞄は今でも彼らの元には戻らないままです。鞄を見ただけもショックだったけど、それ以上に驚いたのが、そのすぐ後に無数に、そして無造作に置かれた数百足はあろうかという靴の山。虐殺された人たちがはいていた物。英語の解説には「僕たちは最後の目撃者です」と書かれていました。

 早くこの空間から出てしまいたい、いや、逃げ出したい、そう心の中で叫んだ私です。私は前に進めば必ず自由な外界に出ることができます。だけど、無数の写真に写っているやせ細った彼らは、どんなに進んでも、どんなに願っても外には出られません。身体を清めるといわれシャワー室のつもりで入ったガス室で最後を迎えたもの、壁の前に立ち射殺されたもの・・・。これが、かつて日本と同盟を組んでいたドイツが行った紛れも無い事実なんです。

 事実には背を向けるべきではないし、職業柄、私は率先して事実を客観的に把握していく必要があります。時代を担う若者に平和の尊さを考えさせるためにも。だけど、それをするのは、私には荷が重い、そう思ってしまった今回の
ホロコースト記念博物館でした。ワシントンDCを訪れる日本人には、航空宇宙間の別館、そしてこのホロコースト記念博物館と、どちらもけして楽しい場所ではないけれど、時間があるのなら是非訪れてもらいたいと切に願います。なお、11歳以下の子供は入場できません。内容を考えると当然かもしれませんが・・・。

この日も何度もセグウェイを見かけました。

 ホロコースト記念博物館を出たのが11:30。最終日なので、まずはモールの西端にあるリンカーン記念館にむかいます。が、遠いのなんのって。ずっと先にあるのは分かるのですが、歩いても歩いてもたどり着かないという感じです。ホロコースト記念博物館からでも2キロ、ホテルをでて既に4キロほど歩いています。それでもまだたどり着けません。ようやくリンカーン像がはっきりと見えてきたのは12:00過ぎのこと。途中、セグウェイに乗っている観光客を目にしたけど、モール内で自由にセグウェイに乗れたら、どんなに便利なことだろう、そう思わずにいられませんでした。

ようやく見えてきたけど・・・
まだまだ先は長い!!!

やっとのことでたどり着いた〜

下の3行に注目

これが有名なリンカーンさん

 有名な人民の人民による人民のための政治、という言葉をしっかりと見た後は、来た道を戻りつつ、途中にある博物館のなかでも特に興味のあるところに立ち寄るつもりでした。が、先を急ぎすぎたためか、最初に訪れる予定だったアメリカ歴史博物館を通り越してしまいました(笑)。戻る気にもなれず、2番目の行くつもりだったナショナルギャラリーにむかいます。荷物のチェックの後、横にあるインフォメーションの館内マップをもらおうとすると、係員のおばあさん、80代だと思うのですが、あんた時間があるのかい?じゃあ、お勧めを教えてあげるよ、と細かく地図を見ながら説明してくれます。途中で、おばあさんが次に言おうとしていることが分かり、先に言ってみると、「あんた頭はいいね〜その通りだよ。はい、もう行っても大丈夫」と笑顔で送り出してくれました。この旅に一番長く英語で会話したのがこの時でした。と、言っても1分ほどの長さだけど(笑)

水分補給・・・のつもりだったけど、開けたら既に炭酸が抜けてました

 その後はおばあさんのくれたマップと地球の歩き方の解説を見ながらどんどんと進んでいきます。写真撮影が禁止の展示室もあるので気をつけないといけないのですが、DCに来た証拠というわけではないけど、絵画の鑑賞の前にまず有名な絵の写真を撮ってしまう自分がなんだかちっぽけな存在に思えてきます。どうせどんなにシャッター速度や絞りなどを調節したところで、名画集のようにはならないのは百も承知です。写しているのも、自分が思う名画ではなく、世間で名画とされるものばかりですし

美術館の外観と名画の数々。

だけど、最近は名画を写すときは、極力、他の観光客の後ろ姿を一緒に写すようにしているんです。絵の大きさがすぐに分かりますからね。そんな証拠写真をとりつつ、絵の10センチくらいまで近づいて細かい描写などを鑑賞していると、あっという間に時間が過ぎてしまいました。さすがに道路だけでも4キロ、博物館の内部を合わせるとさらに1キロは歩いているため、既に疲労気味。そこで、休憩をかねてカフェがお勧めと書かれていたアメリカインディアン博物館に移動しました。モールを挟んだ反対側ではあるものの、入り口までは1キロ近く歩きました。

展示品の数々。ごめんなさい、残念ながら、私にはあまり魅力的には思えませんでした。私の他に日本人観光客はいませんでした。

しかも、国会議事堂周辺は立ち入り禁止になっているし、警察官が多数警備に当たっています。確かに、この博物館は国会議事堂至近だし、正面玄関から国会議事堂が一望できるため、入り口も閉鎖になり、横にある職員用の勝手口からの入館となりました。物々しい警備だけではなく、テレビカメラも多数集まっています。首脳会議はニューヨークで行われるはずなので、じゃあ、ここではいったい何があったのでしょうか?結局、最後までわからずじまいでしたが。  

見渡す限りTVカメラ、アナウンサー、そしてパトカー&警察官。一体、何があったんでしょうね。

 肝心な博物館の印象ですが、ネイティブアメリカンについての博物館がこのワシントンの地、それも国会議事堂至近の場所にあること自体が価値があるように思えます。それなりに時間をかけて展示物を見れまわりました。ビデオ映像も見ました。だけど、展示しているのは彼らの文化と生活に焦点を当てたものばかり。当然とはいえ、コロンブス到着後の歴史などは触れられておりません。これに関する資料や展示品などもあったらさらに価値が上がるのになぁ・・・なんて、勝手に考えた私です。北海道にあるアイヌ文化を紹介する博物館すら、ほとんど行ったことのない私が偉そうなことをいうのは筋違いだと自分でも承知していますが・・・。
 

 1時間くらいいたかな、この場所に。価値は認めるけど、魅力を見出せなかった私です。ここのカフェで食事をとるのが目的で訪れたのだけど、カフェそのものは、メニューがネイティブアメリカンの料理ばかり。それも各地方毎のものが用意されています。興味半分で食べてみようとトレーを持って中に入ったものに、メニューを読んでもそれがいったいどんなものなのか想像すらできないものばかり。英語ではなく、彼らの言語で書かれたものも多く、余計それがなんだか分からなくなっています。迷った挙句、トレーを戻しカフェから出てしまった私です。

 時間は3時。まだいっていない他の博物館に行くことも可能な時間ですが、興味の無いところに入ってもあまり満足感を得られないのを痛感したばかりです。で、さっきまでいたナショナルギャラリーと、初日に訪れた航空宇宙博物館にもう一度足を運ぶことにしました。自分の好きな分野だしね。特に航空宇宙博物館では、自分用のお土産品を買ったり(←ミーハーなんで航空にちなんだジャンバーを。実際には恥ずかしく着れないような代物だけど^^;)、IMAXシアターでの臨場感溢れる映像を見たりと、最後にちなんでちょっとした贅沢もしてしまいました。昼食をとったのはその後の4:30のこと。ここにもマックが入っているので、前日同様にビッグマックのセットを注文しました。微妙に昨日よりも料金が高いのですが、本館と別館の違いというより、中心部が郊外かの違いによるものだと思います。マクドナルドでは日本でも最近地域別価格制を取り入れていますしね。ただ、値段が高いのと関係があるとは思えないけど、バーガーの中のレタスの量も数倍入っているんです。刻まれたレタスなので、かえってそれがバーガーを食べたときに崩れる原因になってしまいました。最初の一口で相当量のレタス、ピクルスなどがこぼれ落ち、二口目の時にはバーガーが崩壊しておりました(笑)。

IMAXシアターの巨大画面は大迫力でした。この日も食事はこれ^^;

 ホテルに戻ったのが5時ちょうどのこと。都市部に数日滞在するだけのため、スーツケースも機内持ち込み用の小さなものだったので荷造りもあっという間に終了です。ゆっくりとバスタブに浸かり、まだ9時だったけどベッドに入ることにしました。2時には目が覚めてしまったけど。

 2時からPCであれこれ調べ物をしていたけど、やはり4時頃にまた眠たくなってしまいました。疲れと時差ぼけで体内時計が狂いまくっているようです。日ごろは、どんなに遅く寝ても目覚まし時計の世話になんかならない私なのですが、やはり時差には勝てません。二度寝での寝坊が不安ではありましたが、1時間ほどぐっすりと眠りました。


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