ワシントンDC旅行記 2009年
2009.9.192009.9.23


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2日目
 結局、寝る起きるを短い間隔で繰り返し、疲労を感じながらの朝の行動開始となりました。この日はまず航空宇宙博物館の別館にむかいます。この旅の一番の目的である、B29エノラゲイの実物を見るためにです。ただ、コンコルドなどの大型機を含む、160機も展示されている巨大な博物館のため、スミソニアンの施設だけど、場所はIADのすぐ近く。交通の便の悪い場所なのですが、昨日と逆で5Aのバスで1時間かけて空港に戻り、そこからシャトルバスで15分ほどの別館に移動します。それぞれ$3.1、$0.5。金額は激安なのですが(←現地発着のツアーなら、入場料が無料にもかかわらず$90もとられてしまいます・・・払えません・・・笑)、なんせバスとシャトルバスの接続が悪すぎです。特に週末が最悪のようで、どちらも1時間に1本の運行なのに、ちょうど5Aのバスが空港に到着する数分前にシャトルバスが出発します。帰りもそう。シャトルバスが後5分早ければ5Aに乗ることができるんです。結局、往復ともに空港ロビーで1時間近くも待つことになってしまいました。シャトルバスの時間を知らないアメリカ人観光客に、どうなってるの?と聞かれて説明してあげたけど、彼は思わず無言になっていました。当初は、初日にせっかく空港まで来ているのだから、そのまま別館に行こうかとも思いましたが、やはりスーツケースをもっての移動となると厳しいものがあります。邪魔なだけならいいけど、入場すら断られかねませんしね。それに、そもそもシャトルバスの時刻表を持っていないんです。待っていればいつかは来るだろうけど、ネットで調べる限りでは時刻表を入手できませんでしたし、最初から本館で時刻表をもらって日曜日に訪問するつもりでした。

「8/6の広島での戦いで最初の
原爆が使用された」、
そう書かれています。

 そんなこんなで、ようやく別館についたのが11:30のこと。入り口を入ると本館以上の数、そして大きさの航空機が目に飛び込んできます。個人的にはなじみのない、歴史的に重要な航空機を中心に集めた本館と違い、別館は戦闘機や旅客機など、私でも名前が分かるものも多く含まれています・・・なんてことを考えていると、銀色に輝く機体を発見しました。もちろん、これがB29。紛れもない、エノラゲイの実機です。銀色に輝くあまりの美しさに、これは違うだろう・・・、いや、違って欲しいとさえ思いました。だけで、近づくにつれ、エノラゲイという文字がはっきりと見えてきました。全体を見渡せる場所に立ち、思わず立ち尽くすこと数分。もっと大きな機体だと思い込んでいたけど、実際には 全長43mほど。特徴的な機体前方の透明な(アクリル製?)の円形パネル。中まではっきりと見えます。こんな狭い操縦室に2人が並んでいたのか・・・と思っていると、80代のおじいさん、それと50代、30代くらいの女性の3人のアメリカ人がやってきました。おじいさん、解説員なのかもしれませんが、静かな声で淡々と語り始めました。盗み聞きをしていると、なんとおじいさんB29の乗員だった様子です。表情一つ変えず、静かに静かにB29の概要と話します。あれがアンテナだよ、だとか、機体の細かな説明までしています。そのおじいさん、どんな気持ちで語っていたのでしょうか。ずっと盗み聞きをしていたけど、ヒロシマだとか原爆という言葉は最後まで聞こえませんでした。各航空機に簡単な解説が付せられているのですが、B29だからといって特別な解説はありません。この解説方法をめぐり、広島の被爆者団体の方と議論があったのも記憶に新しいのですが、これまで授業で平和教材を扱う度に、ALT(外国人指導助手)の先生方が「つまらない話題だ」「面白くない」などと異口同音に言っているのをさんざんと聞いてきたので、たとえB29を前にしても考えることが日本人と彼らでは180度違うのだなぁと思った私でした。せめて、私がこれからの時代を担う子供たちを前に、平和の尊さを語る際に、このB29の写真とともに、認識の相違なども含め現実を伝え、子供たち一人ひとりに、平和とは何かを考えさえたいと思います。私の価値観を押し付けるのではなく、自分自身の平和への認識を確固たるものにしてほしいんです。

このハッチが開いて・・・投下。

 ずいぶんと長居したB29。でも、まだ前方上方からしか見ていません。階段を降り、下から眺めると・・・ハッチが見えてきました。このハッチからあの日、あの爆弾が投下されたんです。もちろん、そんなことはB29の説明文には書かれていません。ただ、別の場所に戦争に関わる解説が集められている場所がありました。日本の特攻隊の説明、そしてB29の投下した爆弾の合計数量などを写真つきで。それを見て私がどう思ったか・・・は、たぶん、みなさんと同じだと思います。また、これを見てアメリカ人が思うことは・・・人それぞれかもしれないけど、割合的には・・・あえて書きません。

桜花。当時、アメリカ軍はこの特攻機を「BAKA」と呼んでいました。飛行機というより、どうみても人が乗った爆弾です。

 B29の真下に、零戦と並ぶかつての名機、紫電、そして終戦間際に特攻のために使われた桜花の実機が展示されています。桜花の実機はこれが1機現存するのみらしいのですが、飛行機というよりただの爆弾です。爆弾に人が乗っているようなもの。ジェットエンジンこそついているけど、飛行のためではなく、「投下」直後に、敵機からの攻撃から逃げるために一瞬だけ用いることのできたエンジン。あとはただ敵艦に向かい特攻するだけ。

 桜花と同じ時代に開発されたB29は、現代の航空機と同様にしっかりと与圧され、しかも空調が完備されていました。それまでのものとは違い、酸素マスクをする必要も、防寒着を着る必要もなく、Tシャツのままで操縦したこともあったらしく、それを知った当時の日本軍は「
アメリカ軍も物資に困窮している」と勘違いしたと言われています。現実には、日本は桜花で特攻するのがやっと。それでもおろかな戦争を続けたため、東京大空襲、二度の原爆と、B29による壊滅的な攻撃を受けることになったのでした。

芸術的に美しいコンコルド。100万円あればラストフライトに乗ったのだけど・・・。

 展示品の位置関係で言えば、大戦期の航空機の次はソ連のミグやF14トムキャットなどの現代の戦闘機を見るのが効率的ですが、足がむかいません展。再びB29の前を通りつつ、ボーイングの旅客機やコンコルドなどを見て気を紛らわしました。だけど、博物館のちょうど中央の高い位置に示されているエノラゲイ。どうしても視界に飛び込んできます。

SR-71。子供の頃、マッハ3.3という最高スピードに興味をもった機体です。

 スペースシャトルの1号機、エンタープライズの実機の見学の後、そういえばこの旅でまだ自分が写っている写真が一枚も無いな、そう思った私です。子供の頃、毎月、月刊天文ガイドを読んでいたほどの宇宙好きですから、迷わずにエンタープライズとの記念写真を通りかかりの人にお願いしました。一瞬、B29と一緒に写る写真は?と自問自答したけど、不謹慎に思え、すぐにそんな気持ちもうせてしまいました。

エンタープライズ。本来はエンジンの付いていない滑走実験機でした。いつエンジンをつけたのでしょうね。

 時計と見ると12:30。意外と長居したつもりですが、まだ1時間しかたっていません。自分の予定では3時くらいまではここにいるつもりでした。だけど、B29、そして桜花の2機を見ただけで目的の99%は達成されてしまい、あとはもう2度と空を飛ぶことのないコンコルドの美しさ、エンタープライズから想起した、コロンビア号、チャレンジャー号の悲劇について考えと、もうこの場所にはいたくはない、そう思ったほどでした。

アメリカのランチといえば、やはりこれ!

 シャトルバスの時間まで、併設されたマックで食事をとります。一番小さなバーガーを選ぼうとしたら、それがビッグマックなのはやはりアメリカ。日本で言うセット(←アメリカではmealといいます)は$8なのですが、ビッグマックなんて生まれて初めて食べる私には、それが安のか高いのかすら分かりません。とりあえず驚いたのは、ドリンクのサイズがLサイズ。しかも紙コップだけ渡され、後は好きなだけ飲めんでいい飲み放題だことです。内容を考えると安いけど、こんな食事を年中続けていると、体形までビッグマックになってしまいます^^;

 こうして13:30発のシャトルバスの乗り、接続のため空港で1時間近く待った後5AのバスでDC中心部に戻ります。戻ったら4時。近隣の博物館なら1ついけそうな時間です。が、たて続きにホロコーストの悲劇を見るのは、私には耐えられません。気持ちを入れ替えるため、ナショナルギャラリーホでレンブラントやフェルメールなどの名画を観ることも考えましたが、名画は落ち着いてじっくりと観たいものですよね。結局、この日はそのままテルに戻り、まずはじっくりと昼寝
(←5時だったけど)をしました。心身ともに疲れていたため、ぐっすりと眠れました。

 目が覚めたら夜の9時。ずいぶん長い間寝てしまったようです。食欲も無いので、このままシャワーを浴びてまたベッドに入ろうかな、とも思いましたが、ホテルの売店に行き、食事の代わりになりそうなものを探しました。で、買ったものはこれとこれ↓。チョコレートかチップスかの究極の選択だったんです。 

売店に売っているのはお菓子だけでした。

 眠れずにプリングルスを食べつつ、偶然メッセンジャーでオンラインになった友人と話をしたりしていると(←PCに内臓のマイクで話すので、まるで国際電話状態です)、気がついたら2時間も話していました。1時間ずつ2人と。どうでもいいことでもいいので、気を紛らわすために何を話していないと精神的にまいってしまいそうな気がしたんです。それほど深く考えさせられたエノラゲイ・・・。


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